カルガリー大学海外教育事情短期研修に同行して
国際交流・協力センター
国際交流コーディネーター
田中 梢
本プログラムが開始されて10数年の歴史が流れ、これまでに多くの学生が参加し、この経験を生かして様々な分野で活躍している。今年本学では、4−5年ぶりにプログラムに参加する学生と同行し、プログラム内容やレベルを確認するとともに、カルガリー大学教育学部関係教員と昨年の評価と今後のあり方について協議を行った。
2005年は本学においても節目の年となった。国際交流活動の体制が見直され、これまで教員の方々のご尽力にお任せしていた活動形態を、大学法人組織として目的を共有し評価を行い、そして次年度プログラムへの改善につなげる、いわゆる「事業」として管理することとなった。今年4月には国際交流・協力センターが設置され、本プログラムに関しても当センターが窓口となり、これまでの実績や学生に与えたインパクトや意義を評価としてまとめ、今回カルガリー大学教育学部へフィードバックする機会を得ることができた。
カルガリー大学も同様に、これまで長年の間プログラムにご尽力頂いたDr. Pat Tarrに全面的に依存していた反省があった。Dr. Pat Tarr女史は、このプログラムの先駆者であった故Dr.Hirabayashiのご遺志を引き継ぎ、公私にわたって計画から実施まで殆どお一人で支えてきてこられた。同大学では今後このプログラム実施体制の基盤を強化し、さらに拡充発展させるため、今年9月より教育学部内で組織的な体制を組んで対応することとなった。そのような意味においてもここ4−5年間途絶えていた窓口担当者との協議が再開された点を高く評価していた。
今回の協議はカルガリー大学側にとってもプログラム再点検の機会となった。例えば本学の学生に対して例年紹介している「カルガリーの日常社会」は、本学の学生にとっては「多民族による国際社会」として映っており、学生が訪問した学校の日常生活で展開されている「先生と生徒とのコミュニケーション」の風景は、彼らにとっては「個人の学習意欲を尊重する文化」として理解される、またホストファミリーの方々が彼らの英語に対して辛抱強く、また真摯に対応する姿勢は、彼らにとっては将来の自信につながっていることなど、こうした何気ない企画がどれだけ彼らにインパクトを与え、将来設計の指針に影響を与えているかをお伝えした。
事実このプログラムの数ある成果の中で、毎年実施運営をサポート頂いているコダマ陽子さん(H5年函館校卒)、デービス麻衣子さん(H9年岩見沢校卒)の活躍を大変嬉しく拝見した。コダマさんは講義通訳者として、カナダの多民族国家の背景や経緯などを伝えて頂き、学生たちはコダマさんの日本語を通じて、カナダへの様々な印象を抱いて北海道に持ち帰っている。デービスさんは在カルガリー日本国総領事館の広報・文化班担当官として、総領事館の事業概要などを紹介頂き、こうしたデービスさんが働く姿、仕事場、世界が学生たちにとって大変印象的であった。お二人とも本プログラムがなければ、今日の活躍がなかったのではないかと思うと、協議の場でDr.Annette教育学部長が「我々プログラムを提供する者は、多感な学生に対して責任があるのですね。」といった言葉に通ずるものがあると感じた。
今年の参加学生5名の内訳は、1−2年生が4名、4年生が1名という構成であった。日頃は携帯メールやインターネットによって、自分の世界をいつでもどこでも確保可能な環境に慣れ親しんでいる彼らにとって、カナダのような多民族社会の中に飛び込んで自力で泳いだ日々や、教育実習の場で自分の国や文化について、異なった考え方や価値観をもつ子どもたちに対してどのようなアプローチで伝え、どのように相手に正しく理解させるかといった、構想に明け暮れる日々を過ごしたことは、生涯忘れられない経験になったことと思う。伝達すべきトピックスの順番を入れ替えてみる、単語の組み合わせを工夫してみる、他の言い方でもう一度伝えてみるなど、伝えたい気持ちや共感を求めたい思いはどんどん膨らむ一方で、技術が追いつかない場面あり、また見事通じた場面もあり、こうした経験を私は帰国後も同じ日本人同士に対しても、相手に正しく伝える配慮や思いやりとして、是非生かして頂きたいと願っている。
「国際人」の本当の意味は、異なった国籍を持つ人たちと接することのみを指すのではなく、同じ国籍同士であっても、異なった意見や価値観を持つ友達や地域の人たちと違いを認め、そして共に学び、働くことができる人であると思う。カナダ人社会がその典型的な事例である。「ナショナル」になれて初めて「インターナショナル」になれるのである。どうか彼らには将来、世界中どこへ行っても通用する「立派な日本人」になってもらいたい。
大学間の国際交流事業は、良き人的ネットワークの構築が基本となる。良き人間関係は信頼性や誠実性といった個人の性格に依存するだけではなく、適応能力や洞察力といったスキルと知識も必要になってくる。今年の協議再開を良き機会として、両校の情報交換をさらに活性化させ、より良いプログラムをより多くの学生に提供していきたいと思う。







