Menu

ここからメインメニュー

メインメニューここまで

大学紹介 大学紹介

ここから本文です。

現在位置

学長対談 大学の資源を地域のために生かす

【学長対談企画】大学の資源を地域のために生かす
   ~古くて新しい町の持続的発展に向けて~
江差町長 照井 誉之介氏 × 北海道教育大学 学長 蛇穴 治夫

 
 江差町と北海道教育大学は平成28年6月に相互協力協定を締結し、互いに教育、文化、学術及び地域振興に関する協力関係を深め、両者の発展と充実に寄与していくことを確認しました。

 締結後改めて、大学が地域と関わることの意義や、地域が大学に求めることなどについてお話を伺いました。
 

地域とともに歩む大学を目指して
 

蛇穴学長: 今回の江差町さんとの連携では、「ソーシャルクリニック」の開設・運営が大きな柱になっています。ソーシャルクリニックという言葉を函館校の先生方から聞いた時、私は非常に良いコンセプトだと感じました。ソーシャルクリニックは、「地域課題診療所」とご理解いただくと分かりやすいと思います。地域で困ったことがあったときには、ソーシャルクリニックまでお気軽にご連絡ください。本学の専門家や学生による対応が可能か検討させていただきます。本学のマンパワーの限界や、専門性との相性もあるため、全てのご要望にお応えすることは難しいと思いますが、できる限り江差町の力になることを目指しています。
 ソーシャルクリニックの興味深いところは、課題解決にあたって、大学と地域の協働プロセスが重視されていることです。医療の場合、診断、処方、治療を主に医師が行いますが、ソーシャルクリニックの場合、大学だけが何かをするのではなく、地域の人々と一緒に考えて、一緒に対処していきます。地域とともに課題解決の方法を探るというプロセスは、今後の地方創生にあたって非常に重要なことだと考えています。大学にとりましても、医療の場合と同じで、診断から治療、そしてその結果の全てが研究成果として蓄積されていくことになります。
 

照井町長: 今回の協定には多くの期待を持っています。とくに、住民を巻き込んで連携していくことが重要です。行政主導で、結局、行政と大学さんだけというふうになれば、意味がありません。私たちは黒子というか、どちらかというと後ろにいて、住民中心の連携事業を進めていきたいと思っています。
 


大学が地域と関わることの意義
 

蛇穴学長: 大学が地域に関わることの一つの意味は、地域の価値づけや再発見を学問的な視点から行えるところにあると思います。地域の良さに関して、「あ、そうだったのか」という納得感のある情報を提供できるのは、専門性の高い研究者の仕事の一つではないでしょうか。そうすると、地域の人々が自分たちの地域に誇りが持てるようになり、次の行動につなげられるのではないかと考えます。
 

照井町長: 学長がおっしゃるように、私も、大学が持つ専門性が重要だと考えています。とくに、理論の部分ですね。私たちは実践。社会を良くするためにどのように変えていくか、悩みながら実践の日々を送っています。私たちに弱いのは理論武装です。大学の皆さんにとっては実践の方が弱いのではないでしょうか。ですから、私たちの地域と大学が一緒になることによって理論と実践がバランスよく発揮できるようになります。こうして生じる相乗効果を通じて、地域と大学にとって良い成果が得られるのではないかと思っています。私としては、理論的な面で北海道教育大学に強く期待しています。
 

蛇穴学長: 今おっしゃっていただいた中にすごく良いキーワードがありました。高等教育機関と地域との連携を、「理論と実践」という言葉でうまく結び付けていただいた気がします。
 学生は、大学で理論的なことを学んでいますが、それをどう活用するか分かりません。だからこそ、アクティブラーニングが盛んに叫ばれているわけです。ただ、大学教員にとってもアクティブラーニングは教えるのが非常に難しいです。ただ単に学生に丸投げするのは、本当のアクティブラーニングではありません。つまり、教員が理論的な背景を学生に伝えながら、それを基に地域で実践するという方法が大切になります。まさに、理論と実践のバランスに気を遣いながら、アクティブラーニングの成果を地域に還元できるようにフォローする必要があります。
 

照井町長: 先日も「まちづくりカフェ」がありました。私は、翌日に北海道教育大学函館校で講演があったために出席できませんでしたが、そこでは、函館校の齋藤征人先生から、自分たちの町の現状把握と課題解決を考えるときに参考となる他の事例を教えていただきました。その上で、江差ではこういうふうに変えていけば実践できるのではないかということを提案していただきました。こういう話は町の人の刺激になっているのではないかと思いますね。



多様な価値観をつなぐ
 

蛇穴学長: なるほど。この町を支えている方々にも良い刺激になっているのですね。町長のお話を伺いながら思ったのですが、大学が関わることで、さまざまな世代や職種の人がつながるのかなと感じました。地域のネットワーク作りに大学が力になれる部分は多いのではないかと思います。教員のみならず、学生も入ることで、つながるポイントはより広がっていく気がします。
 

照井町長: そうですね。町の年齢構成を考えると、大学生と言われるような年齢の世代が一番少ないと思います。函館校の学生さんは町外から来ますが、学生さんが町に入ってくれて、町の将来を一緒に考えていく仕組みができれば、さまざまな世代がバランスよく町づくりに関わるようになると思います。
 また、学生さんには世代間のつなぎ役にもなって欲しいと考えています。70代の町民の方と話をしていたら、「町長、若い人ばっかりみたいなことを言うけど、高齢者だって何かしたいと思っている人はたくさんいるんだよ、地域に出るきっかけを作ってあげれば、そういう人たちも沢山出てきて力になってくれるはずだよ」と言われて、あ、そうだなと改めて感じました。こういうことに関しても、学生さんに一つのつなぎ役になっていただければすごく良いなと私たちも思っています。
 

蛇穴学長: なるほど。町長自身も世代間をつなげられる年代じゃないですか。ここは、町長にも大きく旗を振っていただきたいですね。



 

照井町長: あと、私が大学に求めているものは、多様な価値観を学ぶ場であって欲しいということです。さまざまな地域出身の人がいて、いろんな考え方の人がいて。それで、お互いの意見をぶつけ合って自分がどういうアイデンティティなのかを見極める、大学はそういう場でもあると思っています。
 アイデンティティという点から見ると、函館校の学生さんは、自分の住んでいた町や地域に対する愛着が非常に強いですよね。函館で学んで、また地元に戻るんだという意識の高い学生が多いという印象を持っています。
 江差高校にもそのような生徒が多いのではないかと思っています。1回外に出てもまた戻ってきたい、と。地域のために働きたいという生徒は多いと思います。函館校や北海道教育大学全体には、江差高校や周辺の高校と連携しながら、地域に根差した人材を育てていく役割を期待しています。
 

地域のニーズに応える
 

蛇穴学長: これまで、大学は自分たちの考えに基づいてカリキュラムを作って学生教育を行ってきました。しかし、そのカリキュラムが社会状況に本当にマッチしているかどうかということは、大学自身には分からない部分があります。そういう意味で、社会のニーズや、学生が身につけなければならない力に関して、外からの声に謙虚に耳を傾けなければいけない時代だと思います。社会のニーズをきちんと把握してこなかったから、社会とのマッチングが悪いとか、社会が求めている人材を養成していないといった批判につながっているのでしょう。大学の使命で一番大事なことは、社会できちんと働いていく人材を養成することだろうと思います。とりわけ、本学は国立大学ですので、やはり日本の国に対して必要な人材を供給できるようなカリキュラムでなければ意味がないでしょう。
 そういう意味では、町長さんは謙虚な言い方をされましたが、もっと大学に対しておっしゃっていただいても良いと思います。地域が必要としている力はこれこれで、そのような力を身につけて地域に出てくればとても役立つし助かる、というようなことを言える立場にあるでしょう。大学は、逆に外部の声を受け止めて対応する仕組みを作る必要があります。大学と地域が一緒に人材養成を行うことが、今後ますます重要になってくるでしょう。
 

照井町長: 北海道教育大学は5つのキャンパスがありますが、それぞれのキャンパスが異なる地域に設けられている意義を考えると良いと思います。江差から一番近い函館校についても、函館・道南地域にキャンパスがある事実を活用していただきたいですね。その意味で、今回の包括連携協定が、学生・教員の皆さんが江差に来ていただく入口、もしくはスタートになったと考えています。江差町にとっても大きな励みとなります。今後は、江差に限らず、道南地域での函館校の存在感を大きくしていただきたいです。
 

蛇穴学長: 非常にありがたいお言葉をいただきました。大変ありがとうございます。むしろ、こちらが御礼を申し上げたいくらいです。本学は国際地域学科を開設したばかりで、これから羽ばたかないといけないときにこのような場を頂いたという感覚です。だからこそ、ありがたいと感じています。ここをバネにして函館校は飛び立っていく、そのようなイメージでこの協定に臨んでいます。今の言葉を裏返せば、それだけ逆に責任を持って何らかの成果をきちんと出していかなければならないということです。実のある成果を上げるように頑張っていきたいと思っています。
 

生きた教材としての江差
 

蛇穴学長: 今回の協定によって、本学は「生きた教材」をいただいたという気がしています。学生にとっては、江差町というフィールドワークの場ができたわけです。日本の多くの地域と同じように、江差町も人口減少に直面していると伺っています。人口減少に伴い、さまざまな課題が出てきていると思います。学生がこの町を訪れることで、自分たちも知らなかった町の課題を肌で感じることができることは本当に貴重なことだと思います。
 

照井町長: お互いにとってメリットがありますし、江差町にとっても良い刺激にもなります。むしろ、江差町の方が大きいメリットがあるのではないかと思います。
 

蛇穴学長: そうおっしゃっていただくと気が楽になります。江差町との協働プロジェクトは息の長いものにしていきたいと考えています。いろいろな地方の話を聞いていると、花火を打ち上げて、そのまま終わってしまうような計画もあります。しかし、先程も申し上げましたが、大学が関わってやる以上は、打ち上げ花火じゃなくて、少しずつ実りを感じられるものになる必要があると考えています。たとえば、本学の学生がこの町に愛着を持って、町役場に就職するとかですね。公務員だけでなく、江差町のいろいろな業種に就職するとか、起業するとかというような状況になると本物ですよね。
 そのようなことがすぐに実現しないとしても、この町を作り上げていくのは住民の人たちですので、住民の人たちが幸せになるようなことを、住民の方々と一緒に考えていかなければなりません。本学の教員や学生が外から来て、何かをやったかのような気分になって自己満足して帰っていくのは、何もならないだけでなく、町民の皆さんに対して失礼になります。ですから、実を上げるためにどのように頑張るかがこれからの課題になります。大学として函館校の取り組みを積極的に支援していきます。
 

研究で江差をサポート
 

蛇穴学長: 今回の協定によって、本学の教員も新たな研究の場を得ることになると思います。教員は研究者ですから、どこからでも研究の種を拾うことができます。学生の教育目的で江差にお邪魔する時でも、自分の研究につながることがないか考えています。何か見つかって、学生と一緒に研究してみようといった感じになることも多いはずです。そういった研究の成果が、江差町のためになることを願っています。
 

照井町長: そうですね。外からの視点が入ることは、町民にとっても大きな刺激になると思います。町民に見えにくくなっている江差町の魅力や課題があると思います。そういうところを、学生さんや先生方の目線で地域の中に入って指摘していただきたい。そして、どのように課題を解決していくかを町民と一緒に考えていただけると嬉しいです。
 また、先生方や学生さんに江差の課題を知っていただくことで、皆さんの研究や学びの視野を広げる機会を提供させていただけるのではないかとも期待しています。例えば、学生さんの場合であれば、江差を学ぶことを通じて、自分たちの町や、あるいは世界に目を向けられるような、そういうきっかけにもなれば良いなと思っています。自分たちの故郷って何なのだろうとか、海外ではどうなっているのだろうとか。違いとか共通点とかを自分のことに置き換えながら考えるきっかけになれば良いと思っています。
私は、東京で生まれて神奈川で育ちましたが、江差に出会って、こういう町で生まれたかったと感じました。ここで生まれたら自分の人生、もっと豊かだったのではないかと感じました。お金も人も物も、地方から東京に流れている現在の状況が、私にはなかなかすとんと来ません。




 

蛇穴学長: 本学の教員が江差町を研究対象として論文を発表することで、「江差」の名前が国内外に知られていくこともあります。大学の先生は、さまざまな地域の大学の先生とつながりがあります。函館校の教員が、江差に関する研究成果を発表するようになると、それを見た別の大学の先生方も江差に関心を持ってくるようになります。その中には、江差にやってきて自分の研究の種を探す教員も出てくるでしょう。そうすると、研究対象としての江差町のすそ野が広がってきますし、江差町にとってもこのような教員の研究成果を得られるようになります。
 また、江差に関する研究が、同じような課題を抱えている海外の地域との比較研究につながるようになると、さらにすそ野は広がっていくでしょう。
 今回の協定を通じて、江差町と本学の協働関係の発展につなげていきたいと考えておりますので、今後ともよろしくお願い致します。本日は、お忙しい中ありがとうございました。
 

照井町長: こちらこそよろしくお願い致します。本日はありがとうございました。


                

本文ここまで