国立大学法人 北海道教育大学

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アクションプラン2009-2011

大学教育の充実に向けた取組
大学・大学院における教員養成推進プログラム(教員養成GP)

(1)本プロジェクトの概要
北海道教育大学は、平成18年度に創立以来の大規模な再編を実施する。特に教員養成課程では、学校現場での実践を重視したカリキュラムに抜本的に改革した。本プロジェクトは、この新カリキュラムを効果的に実行するために、新たに開発する「教育実践改善チェックリスト」に基づいて、学生自らが教師の基礎的資質と臨床的実践力を確実に獲得し、「自己成長」しうる指導方式を導入し、教師教育の質の抜本的改善を期すものである。

(2)本プロジェクトの内容及び実施計画について
1)プロジェクト立案の背景
本学は、キャンパス再編に伴い、これまでの教員養成カリキュラムを全面的に見直し、学校現場での体験と実践を通して教師の基礎的資質と臨床的実践力を高める「教育実践フィールド科目」群を中軸としたコア・カリキュラムを樹立した。それは、学部4年間を通して学校と地域の各種教育機関での多様な体験を可能とする「教育フィールド研究」、これを教育の実践的な理論として反省しうるように教授する「教育実践論」、及びこれらの実践的な総括としての「教育実習」の3層構造から成り、系統的にフィールドを基礎に実践と理論を結びつける教師教育を目指すものである。これら教育実践フィールド科目群には、総計14単位の履修が課される。
しかし、これらの科目群を単に個々の授業科目として課すだけでは、所期の目的を達成することはできない。つまり、学習者(学生)自身が実践と理論をつなぐための具体的な方法・基準を、教員養成カリキュラムの実際的な指導方式として体系的に組み込む必要がある。本プロジェクトは、これを、「教育実践改善チェックリスト」の開発及び活用として全面的に導入しようとするものである。

2)「教育実践改善チェックリスト」の開発と活用
  • 「教育実践改善チェックリスト」(以下「チェックリスト」という。)は、(1)教師としての基本的な資質、実践的な指導力の内容を、具体的で「客観的な」指標として提示し、(2)これを手がかりとして学生自身が臨床的な場面で具体的な改善課題を点検し、実践レベルの力量を改善し続けることを可能とし(「自己成長力」の獲得)、(3)さらに、その達成度によって教師としての資質と能力の習得程度を計り、自己評価を促そうとするものである。
  • チェックリストについては、近年教師の自己評価や学校評価の進展に伴い開発されつつあるが、それらの内容は未だ体系的なものとはなっていない。もちろん、学部学生を対象にした教師教育チェックリストも存在していない。
    また、チェックリストは、自己の実践力を手近に点検し改善する方法として有効であるが、単に実用的な項目を列挙したり、安易にマニュアル化したようなものは不適切であり、変化する学校現場のニーズにダイナミックに立脚しつつ望ましい教師像と教育理論に深く裏打ちされたものでなければならない。そこで本プロジェクトでは、まず、チェックリストの独自の体系的な開発を試みる。
    その際、再編に伴う新カリキュラムの実施に合わせて、学内のプロジェクト推進体制を強固に築くとともに、すでに先進的に取り組んできた北海道教育委員会等との密接な協力関係を生かし、チェックリスト開発自体を学校現場及び地域教育行政機関との協動によって行うこととする。なお、そのための準備的な取組はすでに開始しており、協定に基づく北海道教育委員会及び北海道立教育研究所との共同研究において「学校評価システムの確立に関する研究」が進んでおり、また、本プロジェクトの中核メンバーが北海道教育委員会の教員評価検討委員会に加わり、チェックリストの開発研究を担っている。
  • さらに、本プロジェクトでは、単にチェックリストの開発に留まらず、その活用を新カリキュラムの教育指導上のコアに明確に位置づけ、これを効果的に実際に運用し、その教育効果を検証するところまで進めることによって、教師教育のシステマティックな改善を図るものである。
    チェックリストの活用と効果的な運用において重要なのは、3層構造から成る教育実践フィールド科目群の中に一貫してチェックリストによる学生の自己点検と改善努力の活動を組み込むことである。
    ア.「教育フィールド研究」では、1年次から学校現場で日常的に基礎的な体験をする中で、直面する課題ごとにチェックリストにより自己の体験を振り返らせ、これを「日誌」「ポートフォリオ」として蓄積させることで、今後の本格的な実践と理論学習に向けての生きた素材とさせる。また、チェックリストを活用した学生同士のグループワークや相互評価を併せて行い、学生同士が切磋琢磨する姿勢を養う。
    イ.「教育実践論」では、今日的な教育課題に関する実践理論・実践方法等の講義や実技指導を行うが、その場合に、チェックリストの項目がどのような背景や観点から設定されているかが理解されるように指導する。このようなチェックリストの観点と普遍的な指導方法とを関連させることで、各チェックリストの項目の教育的意味が深く理解され、単なるマニュアル的な仕込み型実技訓練を脱することができる。
    ウ.「教育実習」では、すでに学校・地域での体験や大学での理論学習を経た上での実践であるため、全チェック項目を通じて総合的に臨床的実践力の形成を確認していくために用いる。ここでは、一つ一つの切り離された活動としてチェックリストが引証されるのではなく、それらが総体として結びついて教員としての基礎的資質や実践能力の達成度が自己確認され、大学での学習課題が総括される。なお、チェックリストは当然、教育実習評価に当たって学校現場と大学の教員相互で共有されなければならない。
  • しかし、チェックリスト活用の成否を分ける決定的な要素は、自己の体験・実践と理論とをチェックリストによって点検し、自己成長するのを導き支援する大学の指導体制を、組織的にしっかりと確立することである。そのために、本プロジェクトでは、深い現場経験を持つ種々の教育関連実務者が「教職スーパーバイザー」として大学教員とともに、学生指導に当たる体制を全学的に構築する。教職スーパーバイザーは、前述の3層の教育実践フィールド科目群のすべてにわたって、特にチェックリストを活用した事前・事後・中間指導、チェックリストの内容に関わる学生への個別指導・個別相談、学生のグループワークの指導を担う。
3)実施体制と計画
  • チェックリストを開発するために、平成17年度は、学長の下に置かれた教育改革室が本プロジェクトを統轄し、全学委員会である教育研究委員会がプロジェクト実施の中心的主体となる。さらにそのもとに、「教育実践改善チェックリスト作成委員会」を設置する。また、各キャンパスには、キャンパスでの実行組織として「キャンパスプロジェクト委員会」を設置する。
    ア.教育研究委員会は、教育改革室の企画・立案を踏まえ、全学組織として本プロジェクトの実施責任を負う。
    イ.教育実践改善チェックリスト作成委員会は、大学教員、教職スーパーバイザー及び教育委員会からの委員で構成し、継続的にチェックリストの開発・改善を行う。
    ウ.キャンパスプロジェクト委員会は、効果的に本プロジェクトが展開できるように、各キャンパスでのチェックリストの活用推進体制と運営に責任を持つ。
  • チェックリストは、平成17年度末には完成させる。開発と併行して、附属学校及びいくつかの公立学校において試行し、改善を加える。それらの試行を踏まえて、完成させたチェックリストを、平成18年度に新カリキュラムの中で全面的に活用・運用する。さらに、運用結果と効果を外部評価委員等によって厳密に評価にかけるとともに、取組の経験と成果を広く対外的に発表し拡げる。チェックリストの開発・試行・効果の検証・波及の一連の流れは、次の表のとおりである。


「チェックリスト」の開発・試行・効果の検証・波及の流れ

(3)教育プロジェクトの特色について
1)全国初のチェックリストによる臨床的な教師教育改革
これまで、教員養成系大学・学部においては、体系的なチェックリストを開発・活用した事例はなく、現下の教員養成教育改革において先駆的な試みとなる。 チェックリストによる学生の自己成長力の育成の手法は、自らの成長課題を臨床的な場面で常に意識させ(モニタリング)、実践的指導力一般に留まらず、臨床的な実践力、つまり具体的な実践の場面で応用可能な、本人の資質にまで定着した実践力を極めて効果的に育成することを可能とする。

2)学部教師教育における基礎的資質の評価基準の確立
本プロジェクトは、すでに強調してきたように、羅列的なリスト提示やマニュアル依存と異なり、学部教師教育において形成されるべき教師の基礎的資質の評価基準の確立を明確に目標としているものである。現在、広く教員免許制度の在り方として検討され始めているように、教員養成の社会的使命からすれば、単に免許法上の単位修得、カリキュラム上の必要科目の履修をクリアーしているというだけでは、大学における教員養成の責任は果たし得ない。
そこで、チェックリストの趣旨と構造を十分に練り上げることが本プロジェクトでは極めて重要である。
チェック項目の領域は、一般的には、求められる教師の資質に沿った体系的なもので、「学習指導力」、「学級経営力」、「生徒指導力」、「教育相談力」、「地域教育指導力」及び「協働遂行力」などに分けられる。
しかし、もちろんこれらの羅列ではまったく所期の目標には不十分であり、学生の自己点検にとって実用的であるとともに、本プロジェクトにおいては、学部段階で習得すべき基礎的資質を基準に、これらの要素を精選し、構造化することが不可欠である。この点で、望ましい教師像と学校現場のニーズを踏まえて、社会的な評価に耐えうるチェックリストの開発自体が大きな課題となる。
これは、プロジェクト実行の課題であるが、前述のチェックリストの目標設定を踏まえて、特に教師の基礎的資質と学生の自己成長力の形成に主眼を置き、「学習指導力」等5項目の資質の形成を、「協働遂行力」の実際的・臨床的な獲得を通して追求する方向で構造化していく予定である。この方向でのプロジェクトの全体を模式化すると図のようになる。

3)北海道教育委員会等地域教育行政機関との連携の蓄積を最大限に生かした取組
本学は、全国に先駆けて北海道教育委員会等と連携を強めてきた。これは、友好・協力から交流(教育委員会幹部からの理事登用、3人の2年任期専任教授としての人事交流等)、さらには北海道教育に関する「協働」へと発展しつつある。
周知のように、アメリカ、カナダなどでは、州政府と大学の教員養成とは、恒常的に強いつながりを持っており、協働して州の教育政策を立案し実行するまでになっている。
現在、北海道教育委員会は、大規模な学力調査を初めて実施し、北海道教育の長期的ビジョン策定に取り組み始めるなど、地域で求められる人材養成の観点から、新たな施策と方針を検討中である。この作業をベースに、これを大学における養成・研修方針の協働的追求にまで、本プロジェクトを通して両者の連携を発展させることができる。



(4)教育プロジェクトの有効性について
1)汎用性と波及的活用の容易性
チェックリストは、大学の特色や地域性の違いを超えて、一定程度共通する教師の資質を示すものであり、チェックリスト自体が極めて汎用性を持つものである。そのため、他大学や都府県の教育委員会等がこの開発されたチェックリストを用いることにより、即座に実践の具体的な改善に役立てることができる。平成18年度には、本プロジェクトの公開フォーラムを予定しており、その成果を多くの大学に波及させることができる。したがって、他大学・都府県の教育委員会等にとって極めて波及効果の高いものとなりうる。

2)教員の養成・採用・研修をつなぐ要石となる可能性
教員の養成・採用・研修の系統的な連携は、長年大きな課題とされてきた。近年の多様な採用方法の試み、教員評価の取組、研修の強化などの中、その重要性はますます大きくなってきているが、未だそのソリューションの目安が明確となっていないのが現状である。これに対して、本プロジェクトは、教員の養成・採用・研修の3ステージを通ずる評価基準を、「客観的」で分かりやすい「チェックリスト」により共有する形で提起する可能性を持っている。
実際に、本プロジェクトは、北海道教育委員会等との緊密な協動により推進していくことになっており、これを養成・採用・研修の連携策の具体化へ発展させていくことは、プロジェクトの内在的な展開課題であり、現実的な可能性を有している。

3)大学教員の意識改革への大きなステップ
日本の教員養成教育において、依然として最大の課題の一つと言っていいのが、それを担う大学教員の意識改革である。さらに、その中でも特に重要なのが、教員養成教育の基本的目標に関する大学教員の意識の共有の必要性である。この点で、本プロジェクトは、教師の基礎的資質のチェックリストという明快な判断基準を提起するがゆえに、大学教員の意識の共有化の有効なステップとなりうる。

4)プロジェクト終了後に持続する継続的効果
チェックリストは、プロジェクトが終了しても残るものであり、それを継続的に改善し活用することができる。チェックリストは、本来、絶えずそれ自体が吟味され、検証され、改善されていくべきものである。

(5)教育プロジェクトの評価体制について
1)評価の観点
チェックリストは、前述のように継続的に吟味され改善されるべきものであり、かつ、社会的評価に耐えうるものでなければならない。その点で、本プロジェクト自体を外部委員を含めて適切に評価にかけることは極めて重要である。

2)評価を実施する適切な体制とそのプロセス
評価は内部と外部の2つの方法で行い、それらの総括は教育改革室が行うこととする。評価項目の選定や評価方法など、具体的な取組の方策は教育研究委員会が担当する。
自己評価は、各キャンパスのプロジェクト委員会が、教育実践フィールド科目群の実施状況やチェックリストの運用に関して、担当教員や教職スーパーバイザー、学生から評価を求めることにより行う。チェックリストに関しては、主に学生がどのようにそれを活用したかを問うこととする。
外部評価は、外部評価委員会(5頁実施体制図参照)を設置し、その構成メンバーである北海道教育委員会や市町村教育委員会等からの委員のほか、受け入れ学校の教師と児童・生徒及び地域住民からも受けることとする。なお、市町村教育委員会には、各学校からの評価結果の集約を依頼する。また、地域で学生を受け入れるNPOなどの各種団体からの評価も受ける。

3)評価結果を反映させるシステムの確立
本プロジェクトの実効性を高めるためには、上に述べた多元的な評価システムが必要である。最も重視されるべき点は、チェックリストにより、学生がどの程度自己成長ができ、協働遂行力を培うことができたかを具体的に確認することである。これに基づき、チェックリストの点検がなされ、その改善策が立てられる。この改善策は外部評価委員会にも提示される。
これらの評価結果や意見は教育研究委員会に集約され、改善の視点が明示される。
また、地域・学校・児童や生徒による評価結果は、主にホームページ等で公開し、保護者・地域住民の関係者からのモニタリングを行い、その意見を集約し、併せて改善の参考とする。
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