プロジェクトの背景と目的
近年、食の安全性や食そのものを巡る様々な問題が起こっています。そのような状況を鑑み、日本でも平成17(2005)年に、厚生労働省や農林水産省や文部科学省などの各省庁を横断的に関わる形で、食育基本法が制定されました。その法案の中では、食育を生きる上での基本であって、知育・徳育・体育の基礎となるべきものと位置づけられました。さらに、様々な経験を通じて食に関する知識と食を選択する力を習得し、健全な食生活を実践することができる人間を育てる食育を推進することとあります。この背景には、昔は家族の中で伝承されていた食文化も、核家族化や家族員の減少、家族個々人のライフスタイルの変化など、家庭での食育の困難さが要因にあります。
また、平成20(2008)年3月に文部科学省から出された、小・中学校の学習指導要領では、総則において、食育の推進が記述されています。体育科や家庭科や学級活動などを中心として、各教科や給食のみならず、学校全体で系統的に食育に取り組むことが求められています。
一方、食育先進国であるフランスでは、食文化についての国民の意識を高めるための食育を毎年全国規模で行っている食育先進国です。平成13(2001)年には「国民栄養健康プログラム」を打ち出しています。その政策の一つが小学校での「味覚教育」と「栄養教育」です。中でも、政府主導の食育活動である「味覚週間」は重要な位置を占めていて、小学校での「味覚授業」にも大きく貢献しています。以上のことから、国としての取り組みが学校や民間などにも行き届いた状態で、食育が推進されているよきモデルといえます。
日本でも国としての食育の柱はできていますが、学校教育・行政・民間で行っている食育は、継続的なものよりも一時的な実践も多く、決して一つの理論化の上に立って成り立っているものではありません。また、それぞれの立場から、それぞれの食育推進を行っているのが現状です。
そこで本プロジェクトでは、教員養成大学における食育の理論化、および旭川市をフィールドにした食育モデル「旭川モデル」の創生を目的とします。またその成果を活かした大学での講義やe-learningの開設など、本学における教育実践と他地域への展開を目指します。