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令和3年度入学生の皆さんへ(蛇穴学長・小玉北海道教育委員会教育長祝辞)

2021年4月8日

【蛇穴学長祝辞】

 令和3年度入学生の皆さんへ

 北海道教育大学に入学された皆さん、入学おめでとうございます。
 
北海道教育大学の教職員を代表して心よりお祝い申し上げます。

 皆さんにとっては、入学式がなく、どこか晴れ晴れとした気持ちにもなれず、不満をぶつける相手も見つからず、不安な気持ちを抱きながらの入学だと思います。
 大学としては、新型コロナウイルス感染症の状況を見て入学式の中止を決定しました。それは、感染が広がりつつあった全国各地からの人が一堂に会すことによる、皆さん自身の感染とそこからの感染拡大を一番恐れた結果です。
 入学式を挙行する予定だった4月2日、新聞各紙には政府が大阪、兵庫、宮城の3府県に「まん延防止等重点措置」を適用することを決定したという記事が出ていました。また、感染力の強い変異型が増えているという報告もあり、「第4波」を食い止められるか重大な岐路に立っているとの見方も報じられていました。まだ特効薬もなく、ワクチン接種も進んでいない状況ではやむを得ないと判断しています。
 各キャンパスでは、学生をグループに分けてガイダンスを行うなど、密になることを避けて感染とその拡大防止に努めることになっています。
 教職員一同、皆さんの入学をお祝いし、できるだけ不安の無い学生生活を送れるよう準備していましたが、それがかなわず残念に思います。

 皆さんにとって、この一年は多くのことをあきらめなくてはならず、不完全燃焼だったに違いありません。地方によっては3ヶ月にも及ぶ休校の期間があり、その間友人と語ることもできず、部活なども制限され、精神的にも追い詰められていたと思います。その中で受験期を迎えてしまい、新型コロナウイルス感染予防を徹底して健康を維持し、勉学を続けてきたことは、人に言ってもわかってもらえないような辛さとの戦いだっただろうと想像します。
 集団免疫ができなければ新型コロナウイルス感染症は終息に向かわないとの専門家の見方もあります。誰もが同じ状況に置かれている以上、感染防止のためにやるべきだと言われていることは守った上で、今自分ができることを精一杯頑張るしかないのではないでしょうか。今後はワクチンの接種も徐々に進み、集団免疫ができていくでしょう。今、コロナ禍で少し気持ちが荒んでいるかもしれませんが、少し先の未来を見つめ、溌剌と頑張っている将来の自分を思い描きながら、皆で前を向いて進みましょう。
 
 教員養成課程及び国際地域学科地域教育専攻に入学された皆さんへ
 学校の先生を目指して入学した皆さん、心から頑張ってほしいと思っています。最近、教員を志望する人が全国的に減ってきている中、本学の教員養成課程を選んでくれた皆さんには本当に頑張って欲しいと期待する一方で、大学も皆さんの期待に応えられるような教育をしなくてはならないと、身を引き締めています。
 ところで皆さんが先生を目指したきっかけというのは何だったのでしょうか。…どんなことでも話を聞いてくれるいい先生に出会った、人と交わることが苦手な私を救ってくれた、自分のいいところを見つけてくれた、将来進むべき道を一緒に考えてくれた、子どもが好きだ、自分が面白いと思ったことは何でも人に話してみたくなるたちだ、勉強ってやってみれば面白いことだということをなんとか伝えたい、…など、人それぞれの思いがきっとあるのだろうと思います。その気持ちを忘れないでほしいと思っています。
 新聞の投書欄を見ていると、「今の自分があるのは先生のおかげだ」という内容のものをよく見かけます。取り上げられている投書はそのように思っている人のごく一部でしょう。つまり、全国には「先生のおかげだと」思っている人がたくさんいるということです。毎日子ども一人一人を見つめ、何かがあれば医者が患者を治療するのと同じように、問いかけて状況を理解し、持っている専門的な知識と経験に照らして対応し、陥ってしまった状況から回復に導く。そのような実践を日々行っている結果が新聞の投書に現れているのだと思います。
 私自身のことを言えば、親には反発しても、先生には素直になれるという自分がいたように記憶しています。学校の先生にとっては赤の他人である私たちに本気で関わってくれているからこそ、私たちも先生のことを「信頼できる大人」とみていた気がします。赤の他人に教育的な愛情を注ぐことができるのは人間だけです。当たり前のようでいて、考えてみればすごいことだと思います。
 このように考えてみると、学校の先生というのは、単に「経験を積んだ物知り」というような存在などでは決してなく、子どもたちには気づけないかもしれませんが、高度に専門的な目を持って子どもを見て、一人一人に相応しい教育をして成長を助けていることがわかります。皆さんは人としてきわめて尊く、人から尊敬されるべき、そして遣り甲斐のある職に就こうとしているのだと思います。初心を忘れず、ぜひ目標をかなえてください。
 
 学科に入学された皆さんへ
 「国際地域学科地域協働専攻」に進学した皆さん、皆さんは、国際的視野と語学・コミュニケーション力を鍛え、地域の活性化や再生のために働いたり、国際的に活躍しようと考えているに違いありません。皆さんがこれから学ぼうとしているのは、国際的な視野を持って地域を考える地域学といえるでしょう。
 地域学を修めるためには、地理学、政治学、経済学、歴史学、法律学、自然科学など、基礎となる広い学問が必要です。そして「国際」と冠した学科ですから、英語の力も積極的に鍛えてください。しかし、それだけでなく、実際にフィールドとする地域を歩いてみる、見てみる、そこで聞いてみるなどしながら、そこに住む人々の具体的な暮らしを感じ取る、さらには住民が忘れているその地域の価値あるものを見出すことが大事だと思います。そこから色々な課題とその解決策が見えてくるし、その解決のために自分が知らなくてはならないもの、学ばなくてはならないことを自覚することができます。そのようにして皆さんには実践的な力を身につけて欲しいと思います。
 皆さんの先輩たちは「地域づくり支援実習」「地域政策ボランティア実習」「地域プロジェクト」などを通じて地域の人たちとの関係作りをしながら実践的に学んでいます。先日の新聞には胆振東部地震で被災した厚真町での実習において、「被災地支援という任務から、(復興が進んできたことにより)地域の資源を探し出して地域づくりのアイディアを出す任務をもらうようになった。」との、この実習を担当している函館校の先生のコメントも紹介されていました(注1)。
 現時点ではコロナ禍のため実施が困難となっていますが、皆さんは国際的な視野を広げるために積極的に留学を考えたり、外国人との交流や外国文化の学びを通じて、改めて日本や日本人というものの本質を捉え直して、真の国際人として国内外で活躍してもらいたいと思います。
 
 「芸術・スポーツ文化学科」に進学した皆さんは、音楽、美術、スポーツのどれか、あるいはどれもが好きな人たちなのでしょう。これらはどれも人を慰め、癒やし、元気づけ、絆を生む力を持っています。皆さんは誰よりもそのことを実感していると思います。それらは芸術とスポーツが持つ文化的な機能であり価値と言えます。それらを社会やそこに生きる人々のために活かし、地域の人々が生き甲斐を持って、健康で心豊かに暮らすことのできる、そんな地域やまちをつくるために必要となる基礎、及びビジネス的な発想と手法を学ぶことになります。
 芸術やスポーツが持つ力を実際に社会のために活かしている人たちの話を紹介してみましょう。皆さんもニュースで見ているかもしれません。はじめは、病院でバイオリンを定期的に弾いている東城さんの記事です。「音が身体に響いて気持ちが晴れた」「昔を思い出し、倒れてたまるかと元気が出た」という患者さん、黙って閉じた目に涙をあふれさせた患者さんのことが紹介されていました。音楽には不安や痛みの緩和、精神的な安定、リラックスをもたらすとその記事はまとめています(注2)。
 一般社団法人「Sport For Smile」の代表理事、梶川さんのインタビュー記事では、DV(家庭内暴力)を受けた子どもたちにスポーツをする機会を提供している話が出ていました。大学生も手伝っているようです。この取り組みにより「笑顔や人を信じる力」を取り戻していることが報告されていました(注3)。
 ここで水泳の池江璃花子選手の言葉が思い出されました。「スポーツは、人に勇気や絆をくれるものだと思います。私も闘病中、仲間のアスリートの頑張りにたくさんの力をもらいました。」「逆境からはい上がっていくときには、どうしても希望の力が必要だということです。希望が遠くに輝いているからこそ、どんなにつらくても前を向いて頑張れる。私の場合、もう一度プールに戻りたい。その一心でつらい治療を乗り越えることができました。」と述べています(注4)。彼女は、誰もが驚くような努力で、この度のオリンピック出場内定を勝ち取りました。見ている私たちにも感動を与えてくれました。
 最後はホスピタルアートを提案しているNPO「アーツプロジェクト」の記事です(注5)。医療スタッフ、患者、アーティストがともに作業して壁に絵を描いたり立体的な造形をつくり出したりしています。全ては「芸術に人を癒やす力がある」ことを確信し、「医療にこそその力が必要だ」と考えて取り組んでいるそうです。小児科で子どもの不安を少しでも和らげるための空間作りとか、赤ちゃん誕生を暖かく祝福する空間作りなど、さまざまな取り組みをしていることをホームページでも知ることができました(注6)。
 皆さんがこれから学びを深め身につける力は、きっと社会や人のために役立てられます。自信を持って頑張ってください。
 
令和3年4月8日        
北海道教育大学長 蛇穴 治夫

(注1)朝日新聞 2021年2月18日(地域での学び、生かす)
(注2)読売新聞 2018年10月29日([医療ルネサンス]アートの病院(2)癒やされ 力湧く演奏会(連載))
(注3)朝日新聞 2020年8月29日(いま聞く 梶川三枝さん「Sport For Smile」代表理事 社会を変えるスポーツの力とは)
(注4)例えば、時事ドットコムニュース>スポーツ総合>池江選手メッセージ全文 東京五輪
(https://www.jiji.com/jc/article?k=2020072300738&g=spo)
(注5)朝日新聞 2020年11月27日(病院にアートを展開するNPO理事長 森合音さん)
(注6)https://arts-project.com/


【小玉北海道教育委員会教育長祝辞】

 祝 辞

 北海道教育大学の新入生の皆さん、入学おめでとうございます。

 新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、これまでに例のない長期間の学校臨時休業など、皆さんの学びや生活にも多大な影響があったものと思いますが、本日、入学の日を迎えられたことを心からお喜び申し上げます。
 また、ご家族をはじめ、皆さんを支えてこられた方々に対しても、心からお祝いを申し上げます。

 さて、今日、情報通信技術の高度化に伴うSociety5.0の到来やグローバル化の進展、さらには、新型コロナウイルス感染症の影響により生活や仕事のスタイル、価値観が一変し、これまでの延長で先を見通すことは困難な時代となっています。
 そのような状況下でも、子どもたちが誰一人取り残されることなくたくましく成長し、ふるさと北海道が持続的に発展していくためには、何より「教育」の力が欠かせません。

 令和2年度(2020年度)から、小学校で英語が教科化され、小学校の教師にも一定の英語力が求められております。また、小・中学校の児童生徒に1人1台ずつパソコンなどの端末が整備され、ICTを活用して子どもたちそれぞれの適性に応じた指導を行うことがますます重要となるなど、学校を取り巻く環境も大きく変化してきております。
 皆さんには、大学生活を通じて、これからの「教育」に求められる役割や知識・技能を積極的に学び、新時代の学びを支える教師として、その土台を築いていただきたいと思います。

 道教委では、これまでも、北海道教育大学と連携して様々な事業を行っており、令和元年(2019年)7月には、両者で包括連携協定を締結し、教員志願者の確保や教員の質の向上に向けた取組を加速化しております。
 昨年からは、「草の根教育実習システム」と題し、学生の皆さんに、道内の様々な地域で暮らしながら、小規模校の子どもたちとふれ合ったり、地域の方々と一緒に行事に参加したりすることで、先生や子どもたちはもちろん、地域とのつながりを肌で感じ取り、北海道で教師として働く魅力を再発見してもらおうという取組を開始しました。
 また、北海道教育大学と合同で高校生向けの教員養成セミナーを開催するなど、教職の魅力向上や教員養成に関する取組を連携して進めており、こうした様々な場面で、微力ながら、皆さんの成長を支えていきたいと思っております。

 教師という仕事は、子どもたちの笑顔と成長に直接出会える、素晴らしい職業です。
 道教委では、皆さんがここ北海道で教職に就き、誇りとやりがいを持って働くことができるよう、北海道教育大学と連携して各種の取組を進めるほか、学校における働き方改革を始めとした教育環境の整備にも引き続き全力で取り組んでまいります。

 皆さんのこれからの学生生活では、時に困難が待ち受けることもあると思いますが、受け身でやり過ごすのではなく、これを変革の扉ととらえ、高い意欲を持ちながら果敢にチャレンジすることは、今後の人生においてかけがえのない財産になると思います。
 どうか、学業はもちろんのこと、学生時代だからこそできる多くの経験を重ね、信頼できる教師や仲間と出会い、将来、教壇で発揮できるような力を存分に蓄えてほしいと願っております。

 結びになりますが、改めて、新入生、保護者の皆様と、蛇穴学長をはじめとする北海道教育大学の教職員の皆様に心からお祝い申し上げ、入学に当たっての祝辞といたします。
 
令和3年4月8日          
北海道教育委員会 教育長 小玉 俊宏

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